先日、アルコール飲料は大きく分けると「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」の3つに分類されることをご紹介いたしました。

さやかちゃん
サケ丸
醸造酒は糖分を含んだ原料を酵母の働きによってアルコール発酵させたお酒で、代表的なものに日本酒、ビール、ワインなどがあります。
実は、醸造酒は発酵方法によって「並行複発酵」「単行複発酵」「単発酵」の3つに分類され、日本酒は「並行複発酵」で造られたお酒です。
さやかちゃん
サケ丸
本記事では、日本酒の発酵方法である「並行複発酵」について、以下の3つを中心に解説いたします。
- 醸造酒・蒸留酒・混成酒の違いや特徴
- 並行複発酵とはどのような発酵方式なのか?
- 並行複発酵の3つの特徴
本記事をご覧いただきますと、日本酒の醸造工程で最も特徴的な「並行複発酵」についてご理解いただけるかと思いますので、最後までぜひご覧くださいませ。
目次
日本酒は米を原料とした醸造酒|醸造酒・蒸留酒・混成酒の特徴
酒類の醸造方法は「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」の3つに分類されますが、日本酒はお米を原料にして造られた「醸造酒」です。
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醸造酒とは|原料をアルコール発酵させて造られたお酒
醸造酒は、原料を酵母の働きによってアルコール発酵させて造るお酒です。
醸造酒は蒸留酒に比べてアルコール度数が低く、甘みや旨味、香り成分が強いのが特徴です。醸造酒の代表的なお酒は、以下のとおりです。
- 日本酒(米を発酵させて造るお酒)
- ビール(麦を発酵させて造るお酒)
- ワイン(ブドウを発酵させて造るお酒)
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蒸留酒とは|醸造酒を「蒸留」の工程で濃縮して造られたお酒
蒸留酒は、醸造酒を「蒸留」と呼ばれる工程で濃縮して造られるお酒です。
そのため、ウィスキーやブランデーなど蒸留酒はアルコール度数がかなり高いのが特徴です。蒸留酒の代表的なお酒は、以下のとおりです。
- 米焼酎(日本酒を蒸留したお酒)
- ウィスキー(ビールを蒸留したお酒)
- ブランデー(ワインを蒸留したお酒)
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混成酒とは|醸造酒や蒸留酒に果実や甘味料、香料を加えた再製酒
混成酒は、醸造酒や蒸留酒に果実や甘味料、薬草、ハーブ、香料などを加えて造られた再製酒です。混成酒の代表的なお酒は、以下のとおりです。
- 梅酒
- リキュール
- みりん
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関連記事:蒸留酒と醸造酒の違いとは?|蒸留酒は醸造酒を濃縮したアルコール度数の高いお酒
醸造酒の発酵方法は全3種類|並行複発酵・単行複発酵・単発酵
発酵方法は「並行複発酵」「単行複発酵」「単発酵」の3つに分類されますので、それぞれの発酵手順について見ていきましょう。
種類①:並行複発酵|糖化とアルコール発酵を同時に行う発行方式
日本酒の原料であるお米は糖分を含んでいないため、米のデンプンを米麹によって糖に変えますが(糖化)、同時に糖を酵母の働きによってアルコールと炭酸ガスに変えます(アルコール発酵)。
このように、「糖化」と「アルコール発酵」が同じタンク内で同時に行なわれる発酵方法を「並行複発酵」といいます。
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種類②:単行複発酵|糖化とアルコール発酵を別々で行う発行方式
ビールの原料である大麦は糖分を含んでいないため、大麦のデンプンを麦芽(ばくが)により糖化させて麦汁を作り、できた麦汁に酵母を加えてアルコール発酵させます。
このように、糖化とアルコール発酵を別々に行う発酵方法を「単行複発酵」といいます。
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種類③:単発酵|糖化は必要なくアルコール発酵のみ行う発行方式
ワインは原料のブドウに糖分が大量に含まれているため、糖化を行う必要がありません。
このように、糖化の必要がなくアルコール発酵をのみを行う発酵方法を「単発酵」といいます。
サケ丸
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日本酒における並行複発酵の「3つの特徴」
発酵方式は3種類(並行複発酵・単行複発酵・単発酵)ありますが、日本酒の発酵方式である並行複発酵について、特徴を3つご紹介します。
特徴①:並行複発酵が行われる醪(もろみ)は三段仕込みで造られる
三段仕込みとは、醪造り(もろみづくり)において酒母をタンクに入れたあと、「蒸し米・米麹・仕込み水」を3回に分けて仕込む製法です。
酒母に「蒸し米・米麹・水」を3回に分けて仕込み(三段仕込み)、糖化とアルコール発酵させたもの。発酵が進むと3~4週間で醪が完成し、搾ることで日本酒が抽出されます。
なお、醪(もろみ)の詳細は、醪(もろみ)とは?|三段仕込みは多量の日本酒を造る伝統技術でもご紹介していますので、あわせてご参照ください。
仕込みは4日間にかけて行われ、1日目を初添(はつぞえ)、3日目を中添(なかぞえ)、4日目を留添(とめぞえ)と呼びます。
なお、2日目は踊り(おどり)と呼ばれ、「蒸し米・米麹・仕込み水」は加えずに醪内の酵母の増殖を促します。
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そこで3回に分けて少しづつ仕込むことで酵母や酸が薄まるのを避け、着実に醪(もろみ)の量を増やしていきます。
特徴②:並行複発酵は三段仕込みのあとに温度調整しながら行われる
4日間の三段仕込みが終わると、5日目以降は8℃~18℃で温度を調整しながらじっくりと発酵(並行複発酵)させていきます。
発酵(並行複発酵)が終わって醪が完成するのはおよそ3週間から1ヶ月で、完成した醪を搾ると日本酒の原酒となります。
醪は、低い温度で長期間じっくり発酵させると香り豊かで雑味が少ないきれいな日本酒になります。
特徴③:並行複発酵は20度前後のアルコールを造ることができる
酵母は糖を「アルコール」と「炭酸ガス」に変えますが、糖の濃度が一気に高くなると酵母にストレスがかかりアルコール醗酵が上手くできなくなります。
並行複発酵は、麹が出す酵素がお米のデンプンをゆっくりと糖に変えるため、酵母が効率的に糖をアルコールに変えることができます。
そのため、糖化とアルコール発酵のバランスが保たれ、アルコール度数の高いお酒を造ることができるのです。
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並行複発酵で造られる海外のお酒
並行複発酵は、アジアの一部の国でも酒造りで採用されていますが、世界的に見るととても珍しい発酵方式です。
以下では、海外で並行複発酵で造られたお酒をご紹介します。
マッコリ(韓国)|酸味とシュワシュワとした発泡感が特徴の白濁酒
主にお米を原料にして造られた韓国のお酒で、見た目は日本の「どぶろく」のように白く濁っています。
乳酸飲料のような酸味とシュワシュワとした発泡感があり、スッキリした口あたりが特徴です。
- 原料 ⇒米、トウモロコシ、ジャガイモ、トウモロコシ、麦
- アルコール度数 ⇒6~8度
- 味わい ⇒酸味とシュワシュワとした発泡感が特徴
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紹興酒(中国)|酸味と苦味が特徴の飴色(あめいろ)をしたお酒
もち米と麹、水を原料に造られた中国のお酒で、『黄酒(ホワンチュウ)』とも呼ばれています。中国料理店でよく見かけるため、一度は飲んだことがあるのではないでしょうか。
独特の酸味と苦味がありますが、熟成を重ねたものは酸味よりも甘みが強くなり、まろやかな味わいになります。
- 原料 ⇒もち米
- アルコール度数 ⇒14~18度
- 味わい ⇒独特の甘さと苦味が特徴
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ブボッド(フィリピン)|お米を原料にして造られたお酒
お米を原料にして造られたフィリピンのお酒で、日本ではあまり馴染みのないお酒かと思います。
ブボッドとは、フィリピンの山岳民族が使う餅麹(もちこうじ)で、砕いたブボッドを穀物に振りかけて、水と混ぜたものを一つの瓶の中で発酵させて造る醸造酒です。
まとめ:並行複発酵は日本酒造りを象徴する製法
今回は、日本酒造りの「並行複発酵」についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
「並行複発酵」と「単発酵・単行複発酵」との違いや、並行複発酵がアルコール度数の高いお酒る造る仕組みについてご理解いただけたかと思います。
日本酒を飲まれる際は、ビールやワインなどの発酵方式の違いに思いを巡らせながらいただくと楽しいかもしれませんね。
- 並行複醗酵とは、米麹によるお米のデンプンの「糖化」と、酵母により糖分からアルコールを造る「アルコール発酵」を並行して行う発酵方法です。
- 日本酒は原料を酵母の働きによってアルコール発酵させて造る「醸造酒」で、蒸留酒に比べてアルコール度数が低く、甘みや旨味、香り成分が強いのが特徴。
- 蒸留酒は醸造酒を蒸留して造られるお酒で、アルコール度数の高いのが特徴。
- 醸造酒はアルコール発酵の方法により単発酵(ワインなど)、単行複発酵(ビールなど)、並行複発酵(日本酒など)の3つに分類される。
- 日本酒は、三段仕込みにより酵母が元気に活動できるため、効率的にそして大量にアルコールを生み出すことができる。
- 並行複発酵は糖化とアルコール発酵を並行して行い糖の濃度を緩やかに上げていくため、酵母の活動が活発になりアルコール度数の高いお酒になる。
- 並行複発酵で造られる海外のお酒はマッコリ(韓国)、紹興酒(中国)、ブボッド(フィリピン)などがある。