日本酒の火入れとは?|生酒・生詰め酒・生貯蔵酒の違いは火入れの「回数」

激しく燃え上がる炎

サケ丸

「火入れ」は、日本酒を出荷した後に味や香りが変わることのないように行われる作業だよ!

さやかちゃん

「火入れ」をすると味や香りが長持ちするんですね ♪

日本酒の醸造工程で「火入れ」と呼ばれる作業がありますがご存知でしょうか。

火入れをしない日本酒は、酒の色が白く濁ったり、味が酸っぱくなることがありますので、日本酒の酒質を保つ上でとても重要な工程です。

日本酒の工程(火入れ)

※クリックで拡大

また、一般的には火入れは酒造タンクに貯蔵する直前に1回、出荷直前の瓶詰めの直前に1回の計2回火入れを行いますが、できるだけ搾りたてのフレッシュな味わいを楽しんでもらえるように、あえて火入れを1回にとどめている日本酒もあります。

さやかちゃん

なぜ火入れを1回にとどめているのか、気になります!

そこで本記事では、日本酒の火入れについて、以下の2つを中心に解説いたします。

本記事で解説すること

  • 火入れは日本酒を造るうえでどのような役割を果たしているのか?
  • 火入れの回数やタイミングによって異なる「生酒」「生詰め酒」「生貯蔵酒」とはどのような日本酒なのか?

本記事をご覧いただきますと、火入れの違いによる日本酒のバリエーション(生酒・生詰め酒・生貯蔵酒)をご理解いただけると思いますので、ぜひ最後までご覧くださいませ。

火入れとは日本酒を加熱殺菌して酒質を安定させる作業

一升瓶

「火入れ」とは、醪(もろみ)から搾られた日本酒を加熱殺菌して、味や香りを安定させる作業のことです。

醪(もろみ)とは?

酒母に「蒸し米・米麹・水」を3回に分けて仕込み(三段仕込み)、糖化とアルコール発酵させたもの。発酵が進むと3~4週間で醪が完成し、搾ることで日本酒が抽出されます。

なお、醪(もろみ)の詳細は、醪(もろみ)とは?|三段仕込みは多量の日本酒を造る伝統技術でもご紹介していますので、あわせてご参照ください。

火入れは、日本酒の入った一升瓶を直接火で炙るのではなく、約65℃のお湯を使って30分程度加熱します。

さやかちゃん

「火入れ」と聞いて瓶を直接火で炙るイメージがあったけど、違うんですね!

火入れする2つの目的とは|「酵母菌」と「火落ち菌」を加熱殺菌する

升に入った冷酒

日本酒はアルコール度数が15度と高いため、多くの細菌は生育できません。

ただし、「酵母菌」と「火落ち菌」は生育可能で、特に「火落ち菌」はアルコール耐性が非常に強いため、日本酒の中でも簡単に増殖する厄介な乳酸菌です。火入れは、この2つの細菌を殺菌するために行われます。

火入れ作業を行う目的

  1. 酵母菌の殺菌|出来上がった日本酒の酒質を安定させる
  2. 火落ち菌の殺菌|日本酒の酒質の悪化(腐造)を防ぐ

目的①:酵母菌の殺菌|出来上がった日本酒の酒質を安定させる

醪から搾られた日本酒は、糖化酵素やタンパク質分解酵素、そしてわずかな酵母菌が活動可能な状態で含まれています。

そのため、時間の経過とともに日本酒の発酵が進んで、出荷時の香味のバランスを崩す原因になります。

  • 糖化酵素       ⇒ デンプン質を糖に分解
  • タンパク質分解酵素  ⇒ タンパク質を旨味成分(アミノ酸)に分解
  • 酵母菌        ⇒ 糖をアルコールに分解

そこで、火入れによる加熱処理を行い、酵素や酵母など微生物の働きを止めることで、これ以上発酵が進まないようにするのです。

サケ丸

火入れをしないと、出荷時の一番美味しい状態を保つのが難しくなるんだ!

目的②:火落ち菌の殺菌|日本酒の酒質の悪化(腐造)を防ぐ

日本酒造りにおいて最も注意しなければならない細菌に「火落ち菌」があります。火落ち菌は乳酸菌の一種で、増殖すると日本酒が白く濁り、酸っぱくなったり異臭を放つようになります

火入れは、加熱することで火落ち菌の活動を停止(失活)させ、酒質の悪化を防ぐために行われます。

サケ丸

「火落ち菌」は60度前後で失活するから、65度のお湯でしっかり加熱殺菌することが重要なんだ!
MEMO
日本酒を造っている途中で酒が腐ることを「腐造(ふぞう)」、日本酒が出来上がった後の貯蔵中に腐ることを「火落ち」と言いますが、いずれも蔵の経営を左右するほどの莫大な損失をもたらします。

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火入れは62℃~65℃のお湯を使った「低温殺菌」を行う

熱湯

日本酒の火入れでは、62℃~65℃のお湯を使って低温殺菌を行います。

火落ち菌が最も活発に活動する温度帯は28℃~30℃で、65℃前後で死滅します。また、酵素も65℃で「失活」といって活動を停止するため、この温度がちょうどいいのです。

サケ丸

65℃以上温度を上げると風味が損なわれたりアルコールが飛んでしまうんだ。そのため、火入れは30分程度の加熱と速やかな冷却処理が必要なんだよ!

さやかちゃん

アルコールの沸点は78.3度だから、温めすぎると「気化」してしまうんですね…。

火入れは「蛇管火入れ」と「瓶火入れ」の2つの方法がある

火入れの方法は大きく分けて「蛇管(じゃかん)火入れ」「瓶火入れ」の2つの方法があります。

方法①:蛇管(じゃかん)火入れ|春と秋の2回火入れを行う必要がある

蛇管(じゃかん)火入れ

(出典:松みどり11代目【酒蔵便り】

熱湯を入れた円筒形の容器に蛇管と呼ばれる配管がらせん状に配管されており、その配管に日本酒を通すことによって熱処理を行う方法です。

この方法は、日本酒の貯蔵タンクに存在する火落ち菌を殺菌することができないため、春と秋の2回火入れを行う必要があります。

方法②:瓶火入れ|大吟醸や純米吟醸以上の高級酒で用いられる方法

瓶火入れ

(出典:猪又酒造「月不見の池」

日本酒を入れた瓶をお湯の入った鍋に入れて湯煎する方法です。

瓶火入れは手間がかかりますが、蛇管火入れよりも温度の低下がスムーズに行われ酒質の低下を最低限に留めることができるため、大吟醸や純米吟醸以上の高級酒はこの方法で火入れされます。

火入れのタイミングによって異なる日本酒の味わい

日本酒のタイプによる火入れの違い

※クリックで拡大

火入れは貯蔵前と出荷前の2回行われるのが一般的ですが、火入れの回数やタイミングによって「生酒(なまざけ)」「生詰め酒(なまづめしゅ)」「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」「火入れ酒」に分類され、味わいや香りが異なります。

生酒(なまざけ)は火入れを一切行わない

生酒の特徴
火入れの回数 0回
香味の特徴 フルーティーでフレッシュな味わい
保存方法 冷蔵保存
保存期間 製造から9ヶ月間

生酒は、火入れによる加熱処理を一切行わない日本酒で、別名「本生(ほんなま)」「生々(なまなま)」とも呼ばれています。

フルーティーでフレッシュな味わいを楽しむことができますが、酵母や微生物が生きたまま瓶詰めされているため品質が変わりやすく、とてもデリケートなお酒です。

そのため冷蔵庫での保管が必須で、開封後はできるだけ早く飲み切ることをおすすめします。

サケ丸

生酒は冷蔵技術の発達により今では一年中楽しむことができますが、冷蔵庫がなかった頃は厳冬の酒蔵でしか味わうことができなかったんだ。

関連記事:日本酒の生酒とは?|生詰め酒・生貯蔵酒との違いや正しい保存方法をご紹介

生詰め酒(なまづめしゅ)は酒造タンクに貯蔵する直前に1回火入れ行う

生詰め酒の特徴
火入れの回数 1回(貯蔵タンクに貯蔵する直前)
香味の特徴 程よい熟成感とまろやかな口当たり
保存方法 冷暗所で常温保存
保存期間 製造から9ヶ月間

生詰め酒は、貯蔵タンクに貯蔵する直前に1回火入れしますが、出荷の瓶詰め直前には火入れしない日本酒で、別名「ひやおろし」「秋あがり」とも呼ばれています。

冬から春にかけて搾られた原酒を1回だけ火入れをして、貯蔵タンクで半年間熟成させたうえで秋口に出荷します。そのため、程よい熟成感があり口当たりがまろやかなのが特徴です。

1度火入れが行われているため生酒と比べると酒質は安定していますが、常温で保管すると味が変わりやすいので、できるだけ冷蔵庫で保管してください。

サケ丸

「ひやおろし」や「秋あがり」は秋限定のお酒!毎年、販売が解禁されるのを楽しみにしている日本酒ファンは多いんだよ!

関連記事:秋限定の日本酒「ひやおろし」とは?|熟成された味わいは秋の味覚とベストマッチ

生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)は出荷の直前に1回火入れを行う

生貯蔵酒の特徴
火入れの回数 1回(出荷の瓶詰め直前)
香味の特徴 フレッシュな味わいと酸味
保存方法 冷蔵保存
保存期間 製造から6~9ヶ月間

生貯蔵酒は、火入れを行わずに生のまま貯蔵タンクに貯蔵し、出荷の瓶詰め直前に1回火入れを行う日本酒です。

そのため、生酒のようなフレッシュな味わいと酸味を楽しむことができます。生詰め酒と同様に常温で保管すると味が変わりやすいので、できるだけ冷蔵庫で保管してください。

さやかちゃん

「生」の状態で「貯蔵」しているから「生貯蔵酒」なんですね!

まとめ

今回は、日本酒の美味しい状態を保つために必要な「火入れ」の作業についてご紹介しましたが、いかがだったでしょか。

私たちが日頃いただく日本酒は、火入れ作業が2回行われたものが多いのですが、火入れを1回にどどめた醪(もろみ)から搾られた出来たてのフレッシュ感を残した「生詰酒(なまづめしゅ)」や「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」をご紹介させていただきました。

火入れの回数を減らすことで味わいがどのように変わるのか、日頃飲んでいる日本酒との見比べてみると楽しいかもしれませんね。

  • 「火入れ」とは、醪を搾る上槽(じょうそう)作業によって抽出された日本酒を加熱処理すること
  • 日本酒の火入れ作業は、出来上がった日本酒を安定した品質にし火落ち菌と呼ばれる乳酸菌を殺菌することを目的に行われる。
  • 日本酒の火入れは62℃~65℃の低温殺菌を行っている。
  • 火入れの方法は「蛇管火入れ」「瓶火入れ」の2通りの方法がある。
  • 生酒火入れによる加熱処理をしていない日本酒で、フルーティーでフレッシュな味わいが特徴です。
  • 生詰め酒貯蔵タンクに貯蔵する直前に1回火入れを行い、出荷前の瓶詰めの際には火入れを行わない日本酒で、程よい熟成感があり口当たりがまろやかなのが特徴です。
  • 生詰め酒は、別名「ひやおろし」「秋上がり」とも呼ばれます。
  • 生貯蔵酒火入れを行わずに生のまま貯蔵タンクに貯蔵し、出荷前の瓶詰めの際に1回火入れを行う日本酒で、生酒のようなフレッシュな味わいが特徴です。

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