サケ丸
さやかちゃん
日本酒の秋の味覚といえば「ひやおろし」。
ひやおろしは、適度に熟成された日本酒で、旨味を増した秋の食材との相性が抜群です。
サケ丸
一般的な日本酒では味わえない深い味わいと濃厚な味わいは、ひやおろしならではのもの。
そこで今回は、そんな秋の晩酌にピッタな「ひやおろし」について、以下の3つを中心に解説いたします。
- 「ひやおろし」の特徴や種類
- 「ひやおろし」と「秋あがり」「生詰め酒」の違い
- 「ひやおろし」の美味しい飲み方と相性の良い料理
ひやおろしのことを知れば、日本酒の新たな魅力に触れることができるかもしれませんので、ぜひ参考にしてください。
目次
「ひやおろし」は春から夏にかけて熟成させた日本酒
「ひやおろし」は別名「秋あがり」とも呼ばれ、秋にしか味わえない季節限定の日本酒です。
その年に収穫された新米を冬に仕込んで新春に出荷する「新酒」は、搾りたてのフレッシュな味わいが特徴です。
一方、「ひやおろし」は、新酒を春から夏にかけて熟成させ秋に出荷するお酒で、まろやかな飲み口と奥深い味わいが特徴です。
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関連記事:【日本酒の新酒】販売時期は12月から3月|フレッシュな季節限定酒を味わおう!
「ひやおろし」はタンクに貯蔵される直前に1回火入れしたお酒
一般的な日本酒は、タンクに貯蔵される直前に1回、出荷前の瓶詰め直前に1回の合計2回火入れを行います。
なお、火入れについては、「日本酒の火入れとは?|生酒・生詰め酒・生貯蔵酒の違いは火入れの回数」でもご紹介していますので、あわせてご参照くださいませ。
「ひやおろし」はタンクに貯蔵される直前に1回火入れを行いますが、出荷前の瓶詰め直前の火入れは行いません。
なお、火入れを1回だけ行う日本酒は「半生」と呼ばれ、生酒のような果実を思わせるフルーティーな味わいを残しながら、熟成によるまろやかな味わいの日本酒に仕上がります。
- 生貯蔵酒
⇒ 出荷前の瓶詰め直前に1回火入れを行う - 生詰め酒
⇒ タンクに貯蔵される直前に1回火入れを行う - ひやおろし
⇒ タンクに貯蔵される直前に1回火入れを行う
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「ひやおろし」の2つの語源|「①常温で出荷」と「②生の状態で出荷」
「ひやおろし」の語源は諸説ありまが、最も有力といわれるのが以下の2つです。
- 暑い夏を過ぎて秋の涼しくなった外気温とタンク内で熟成された日本酒の温度が同じになる9~10月に出荷されるから「冷や(=常温)おろし(=出荷)」
- 貯蔵タンクに入れる前の1回だけ火入れを行い出荷時は火入れを行わない「生詰め」の技法が採用されていることから「冷や(=生)おろし(=出荷)」
なお、「秋あがり」とは、日本酒が夏を越えて秋になって熟成され、香りや旨味が増した(酒質が向上した)状態を表す言葉です。逆に、熟成が上手くいかず味が落ちた(酒質が低下した)ことを「秋落ち」といいます。
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「ひやおろし・秋あがり」と「生詰め酒」の関係とは?
生詰め酒は、「ひやおろし」や「秋あがり」と同様に貯蔵タンクに入れる直前に1度だけ火入れを行うお酒です。
生詰め酒のうち、暑い夏をまたいで熟成させて秋口に出荷する生詰め酒を「ひやおろし」や「秋あがり」と呼んでいるのです。
つまり、「ひやおろし」や「秋あがり」は生詰め酒の一種といえます。
サケ丸
関連記事:日本酒の生酒とは?|生詰め酒・生貯蔵酒との違いや正しい保存方法をご紹介
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「ひやおろし」の香味の変化|9月から11月にかけて深まる熟成度合い
「ひやおろし」が解禁され市場に出回るのは9月から11月ころ。
2度目の火入れを行なわない「半生」状態であるため、9月から11月にかけて刻々と熟成の度合いを深めていきます。
お同じお酒でも販売されるタイミングによって味や香りが変わる「ひやおろし」は、深まる秋に飲むのにピッタリなお酒です。
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【9月に出荷】夏越し酒|まろやかな味わいとしっかりとしたコクが特徴
夏を越して涼しい秋風が吹き始める9月に出荷される「ひやおろし」は「夏越し酒(なごしざけ)」と呼ばれています。
新酒特有のアルコールの荒々しさが取れ、まろやかで落ち着いた味わいとしっかりとしたコクを味わうことができます。
まだ残暑が残るこの時期は、夏の生酒の味わいを残す「ひやおろし」を冷たく冷やして飲むと、爽快な清涼感を楽しむことができます。
- 冷や :20度の常温で飲む
- 冷酒 :5度(雪冷え)~15度(涼冷え)に冷やして飲む
- みぞれ酒:日本酒を凍らせてシャーベット状にする
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【10月に出荷】秋出し一番酒|香味が際立ち飲み頃を迎えた味わいが特徴
秋が深まった10月に解禁されるの「ひやおろし」は「秋出し一番酒(あきだしいちばんざけ)」と呼ばれています。
熟成が進むことで味わいや香りが際立っており、まさに飲み頃を迎えた珠玉の1本です。
深い味わいとコクは冷酒でもお燗でもバランス崩すことがないため、その日の気温や食卓の旬の食材に合わせてお楽しみください。
- 冷酒 :15度(涼冷え)に冷やして飲む
- お燗 :35度(人肌燗)に温めて飲む
サケ丸
【11月に出荷】晩秋旨酒|旨味とコクが深まった完熟の味わいが特徴
秋の終わりに登場するひやおろしは「晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)」と呼ばれています。
旨味とコクがさらに深まった完熟の味わいが特徴で、トロンとした口当たりを楽しむことができます。
濃厚な味わいはクセのあるジビエ料理にもピッタリ。季節がらお燗にすると深みのある味わいが際立ちます。
- お燗 :40度(ぬる燗)に温めて飲む
さやかちゃん
「ひやおろし」は秋の味覚と相性抜群
春から夏にかけて約半年間熟成される「ひやおろし」は、時間の経過とともにアルコールの角が取れてまろやかになり、味わいに深みが出ます。
そんな「ひやおろし」は、秋になって脂の乗った魚介類や肉類、旨味が増した野菜などの秋の食材と相性が抜群です。
旨みたっぷりの秋の味覚と、日ごとに熟成を重ねる「ひやおろし」の最高のマリアージュをお楽しみください。
和食 | 洋食 | 中華 |
・鍋料理 ・秋刀魚の塩焼き ・うなぎの蒲焼 ・味噌煮込みのおでん |
・ローストチキン ・ビーフシチュー ・ミートソーススパゲティ |
・シュウマイ、焼き餃子 ・豚の角煮 ・麻婆豆腐 |
まとめ:深まる秋とともに「ひやおろし」をお楽しみください
ここまで、「ひやおろし」についてお話しましたが、いかがだったでしょうか。
ひやおろしは春から夏にかけて熟成した日本酒で、醪(もろみ)から搾られた原酒を貯蔵タンクに入れる直前に1回火入れを行うため、フルーティーでまろやかな味わいになることをお分かりいただけたかと思います。
日本酒の出来たてのフレッシュ感を味わえる「新酒」はアルコールの荒々しさが特徴のお酒ですが、ひやおろしは適度な熟成によりアルコールの刺激が和らぎ、まろやかな味わいを楽しむことができますので、新酒とひやおろしの味の違いを試してみるのも楽しいかもしれませんね。
- 「ひやおろし」とは、冬に搾られた新酒の風味を損なわないよう春先に1度火入れを行い、貯蔵タンクで春から夏にかけてじっくりと熟成したうえで秋口に出荷する日本酒のこと。
- 「ひやおろし」の語源は諸説あるが、最も有力といわれるのが以下の2つです。
①暑い夏を過ぎて秋の涼しくなった外気温とタンク内で熟成された日本酒の温度が同じになる9~10月に出荷されるから「冷や(=常温)おろし(=出荷)」
②貯蔵タンクに入れる前の1回だけ火入れを行い出荷時は火入れを行わない「生詰め」の技法が採用されていることから、「冷や(=生)おろし(=出荷)」
- ひやおろしは、火入れを1回行った「半生」の状態を保つことができるため、生酒のようなフルーティーな味わいを残しつつ、熟成によるまろやかな味わいが特徴。
- 「ひやおろし」が解禁され市場に出回るのは9月から11月ころ。
- 「ひやおろし」は2度目の火入れを行っていない「半生」状態であるため、9月以降の3ヶ月の出荷期間中も日ごとに熟成が進む。
9月に出荷される夏越し酒(なごしざけ)は、新酒特有のアルコールの荒々しさが取れ、まろやかで落ち着いた味わいとしっかりとしたコクが特徴。 - 10月に出荷される秋出し一番酒(あきだしいちばんざけ)は、熟成が進むことで味わいや香りが際立っている。
- 11月に出荷される晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)は、旨味とコクがさらに深まった完熟の味わいが特徴で、トロンとした口当たりが楽しめる。