サケ丸
さやかちゃん
「普通酒」と呼ばれる日本酒をご存じでしょうか。
スーパーや酒屋に行くと紙パックの日本酒がたくさん陳列されていますよね。実は、紙パックで販売されている日本酒のほとんどは「普通酒」です。
日本酒は、酒類業組合法によって「普通酒」と「特定名称酒」の2つに分類されています。その中で、普通酒は日本酒市場の70%を占めており、私たちにとって身近なお酒なのです。
一方、「特定名称酒」は吟味した原料を使って手間ひまかけて造られた高級なお酒で、純米酒や吟醸酒、本醸造酒など8種類があります。
そこで本記事では、以下の2つを中心に解説します。
- 普通酒と特定名称酒は具体的にはどのような違いがあるのか?
- 普通酒は特定名称酒と比べて味や品質が劣るのか?
本記事をご覧いただければ、きっと普通酒の魅力を再発見していただけると思いますので、ぜひご覧くださいませ。
目次
普通酒は特定名称酒(純米酒・吟醸酒・本醸造酒など)以外のお酒
普通酒は低価格であることから、家飲みや晩酌にピッタリのお酒です。
一方、特定名称酒は原料や精米歩合、副原料など法律の要件を満たした高級酒で、純米酒や吟醸酒、本醸造酒などがあります。
それでは、普通酒と特定名称酒の違いについて具体的に解説いたします。
お米の表面を削って残りの部分をパーセンテージ(%)で表した指標。例えば、「精米歩合60%」はお米を60%になるまで削った(お米の表面を40%削った)ということになります。また、酒造りにおいてお米の精米のことを「米を磨く」と表現します。
なお、精米歩合の詳細は、「精米歩合とはお米の削り具合を示す指標|精米歩合で変わる日本酒の味わいとは?」でも紹介していますので、あわせてご覧くださいませ。
特定名称酒は法律で厳しい要件が定められている高級酒
普通酒と特定名称酒の違いは、特定名称酒の法律上の要件(酒類業組合法第86条の6第1項)を満たしているか否かあります。
特定名称酒 | 原料 | 精米歩合 | 香味の要件 |
本醸造酒 | 米、米こうじ 醸造アルコール |
70%以下 | 香味、色沢が良好 |
吟醸酒 | 60%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 | |
大吟醸酒 | 50%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 | |
特別本醸造酒 | 60%以下又は特別な製造方法 | 香味、色沢が特に良好 | |
純米酒 | 米、米こうじ | - | 香味、色沢が良好 |
純米吟醸酒 | 60%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 | |
純米大吟醸酒 | 50%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 | |
特別純米酒 | 60%以下又は特別な製造方法 | 香味、色沢が特に良好 |
特定名称酒は原料や製法により8種類に分類されていて、要件を満たせばそれぞれの名称を表示することができます。
- 原料米の等級:農産物検査法によって3等級以上と認められたもの
- 米麹の使用割合:白米の重量に対する麹米の重量の割合が15%以上
- 精米歩合:精米歩合の表示が義務付けられている
- 醸造アルコール使用割合:白米重量の10%を超えな
サケ丸
さやかちゃん
普通酒は「特定名称酒」に分類されていない日本酒
特定名称酒の要件を満たしていない日本酒は、全て普通酒になります。
スーパーや酒販売店で日本酒のラベルに純米酒や吟醸酒、本醸造酒などの表示がなければ普通酒と見て間違いないでしょう。
醸造アルコール、糖類などの副原料の重量が、米・米麹の重量の50%を超えないこと。
「普通酒=低品質な日本酒」ではない!
普通酒は特定名称酒の要件を満たしていないため、「低品質なお酒」というイメージを持たれている方もいますが、そんなことはありません。
普通酒でも吟醸酒と同じくらいお米を磨いて造られた日本酒もあります。
例えば、新潟県南魚沼市にある八海醸造株式会社の「清酒 八海山」は、「日頃飲む日本酒だからこそクオリティーの高いお酒を提供したい!」という考えのもと、普通酒でありながら精米歩合60%で米を磨き上げた淡麗でスッキリとしたキレのあるお酒です。
サケ丸
また、山口県岩国市の旭酒造株式会社では、等級が付かないお米(特定名称酒と名乗るには3等以上が必要)を精米歩合30%まで磨上げて造られた「獺祭 等外」という普通酒があります。
こちらは米粒がふぞろいなどの理由で等外となった「山田錦」を使っており、メロンのような甘い香りとなめらかな口あたりを楽しむことができます。
サケ丸
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普通酒の美味しい飲み方|お燗にすると味や香りがふくらむ
普通酒は温めることによって味や香りがふくらみ、心も体も温めてくれます。
また、日本酒を熱燗(50℃程度)や飛切燗(55℃以上)のような高い温度帯で楽しみたい方は、醸造アルコールが添加されている普通酒をぜひお試しください。
一般的に日本酒は、温度が上がるごとに辛さばかり目立つようになりなりますが、醸造アルコールが入った普通酒は温度変化に強く、燗を付けると味がまろやかになりますので、アツアツのお燗酒もおいしくいただくことができます。
主にサトウキビで作られた無味無臭の高濃度のアルコール。日本酒に醸造アルコールを加えるとスッキリした味わいになり、香りが引き立つ効果があります。
なお、「醸造アルコール」については、「酔いや頭痛は醸造アルコールが原因?|日本酒に醸造アルコールを入れる3つの理由」でもご紹介していますので、あわせてご覧くださいませ。
関連記事:お燗酒の作り方|湯煎と電子レンジを使った日本酒の温め方のコツとは?
普通酒は二日酔いや悪酔いするというのは本当?
太平洋戦中戦後の米不足により造られていた三増酒(三倍増醸清酒)は、醸造アルコールが入っている日本酒は悪酔いするという悪いイメージを作り上げました。
三増酒は、醸造した日本酒に2倍の醸造アルコールを混ぜ合わせ、薄くなった甘みを補うため糖類や酸味料、グルタミン酸ソーダなど加えて造られたお酒です。
このような日本酒は「甘くてベタベタするお酒」となり、日本酒にあまり馴染みのない方に悪いイメージを根付かせる要因となってしまったのです。
ただ、2006年の酒税法改正により、清酒に加えられる醸造アルコールが少なくなるよう規制されました。そのため、三増酒はリキュール類や雑酒に分類され日本酒(清酒)として認められなくなりました。
さやかちゃん
関連記事:日本酒のイメージを低下させた「三増酒」とは?|三増酒が誕生した背景と現状
まとめ
最近は、原料にこだわって造られた普通酒も登場して、品質の高い普通酒をリーズナブルな価格で楽しめるようになりました。
各蔵で販売している普通酒を飲み比べながら、自分にぴったりな1本を探し出すのも楽しみのひとつと言えるでしょう。
- 普通酒は特定名称酒(全8種類)に規定されていない日本酒のこと。
- 普通酒でも吟味された原料を使っていたり、こだわりの製法で造られてる日本酒もあり、決して「普通酒=低品質な日本酒」ではない。
- 普通酒は悪酔いするというイメージは戦中戦後の「三増酒」によるものだが、2006年の酒税法改正により三増酒は「清酒」として認められなくなった。
- 醸造アルコールが添加された普通酒は、熱燗(50℃程度)や飛切燗(55℃以上)のアツアツのお燗酒でもおいしくいただける。