サケ丸
さやかちゃん
ワインやウィスキーは熟成を重ねることで味や香りに深みが増しますが、日本酒にもきちんとした管理のもとで熟成を重ねた「古酒(長期熟成酒)」と呼ばれるお酒があります。
最近は「熟成ブーム」の影響でしょうか、日本酒の古酒(長期熟成酒)の人気が徐々に広まっています。
そこで本記事では、日本酒の古酒(長期熟成酒)について、以下の2つを中心に解説いたします。
- 日本酒の古酒(長期熟成酒)はどのようなお酒なのか
- 古酒(長期熟成酒)の種類や美味しい飲み方について
本記事をきっかけに、日本酒の古酒の奥深さや味わいを知るきっかけになりましたら幸いです。
目次
古酒(長期熟成酒)は熟成により味や香りが変化した魅力なお酒
古酒(長期熟成酒)は生酒とは対極に位置する熟成を重ねたお酒ですが、一体どのようなお酒なのでしょうか。
古酒(長期熟成酒)の定義|酒蔵の独自の判断のもとで販売している
純米酒や吟醸酒のような「特定名称酒」は、酒税法上の規定により原料や製法に関する明確な規定が定められています。
これに対し、古酒(長期熟成酒)には明確な定義はありません。古酒(長期熟成酒)を製造・販売している酒蔵や酒造メーカーは、独自のルールや定義に基づいて製造販売しているのが実情です。
さやかちゃん
関連記事:日本酒の特定名称酒とは?|8種類の製法や味わいの違いを徹底解説!
古酒とは|現在の醸造年度(BY)以前製造された日本酒は全て古酒
そんな中で、「古酒」は「新酒」に対して使われることが多い言葉です。
酒造年度内に造られて出荷された日本酒のこと。 一般的に、その年の秋に収穫した新米で造られた最初の日本酒を「新米新酒」、その年の醪から最初に搾られた日本酒を「初しぼり」と呼ばれ、12月から翌年の3月にかけて出荷されます。
なお、新酒については「【日本酒の新酒】販売時期は12月から3月|フレッシュな季節限定酒を味わおう!」で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧くださいませ。
一般的に日本酒は、現在の醸造年度(BY)より前の年度に造られたお酒は全て古酒と呼ばれています。
- 現在の醸造年度(BY)より前の年度に造られたお酒は全て古酒
例えば、現在の酒造年度が29BY(平成29年7月~平成30年6月)だとすると、28BY(平成28年7月~平成29年6月)以前に造られた日本酒は全て「古酒」となるのです。
サケ丸
長期熟成酒とは|熟成酒を造ることを目的に醸造された日本酒
一方、熟成酒を造ることを目的に醸造され熟成を重ねた「長期熟成酒」と呼ばれる日本酒があります。
日本酒の熟成古酒の普及と製造技術の向上を主な目的として設立された「長期熟成酒研究会」では、「満3年以上酒蔵で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を熟成古酒と定義しています。
- 満3年以上酒蔵で熟成させた糖類添加酒を除く清酒
古酒の中には、冬に仕込んだ日本酒をひと夏寝かして熟成させた「ひやおろし」など、熟成期間が1年、2年のものがあります。
長期熟成酒は、3年、5年、10年という長期間熟成しますので、トロンとした口当たりと独特な味わいを楽しむことができます。
ライト系(古酒)
⇒熟成年数が若く、香りや味わいもスッキリとしたお酒
ヘビー系(長期熟成酒)
⇒熟成年数が長く、香りや味わいが複雑でどっしりとしたお酒
さやかちゃん
関連記事:熟成古酒とは(長期熟成酒研究会)
日本酒には「賞味期限」の表示義務がない
日本酒はアルコール度数が15度前後と比較的高いため、腐ることはまずありません。そのため、日本酒には「賞味期限」の表示義務がありません。
それどころか、5年、10年熟成させることによって甘みやコクが深まり、香りが豊かになるのです。
未開封であれば1年以上経った日本酒も飲むことができますので、ぜひ味わってみてください。ひょっとしたら、熟成によって味わいが増しているかもしれませんよ。
サケ丸
古酒(長期熟成酒)は熟成期間で色・香り・味わいが変わる
日本酒は長期熟成することによって、お酒の色が「琥珀色(こはくしょく)」に変化し、香りは「熟成香」と呼ばれる熟成感のある香りを発するようになります。
「色」の変化|熟成により「薄い黄色 ⇒ 薄い茶色 ⇒ 濃い茶色」に変わる
日本酒は熟成させることによって無色だったお酒の色が「薄い黄色 ⇒ 薄い茶色 ⇒ 濃い茶色」へと変化します。
これは、日本酒に含まれる糖分とアミノ酸が結びついて化学反応(メラード反応)を起こして、褐色物質(メラノイジン)が生成されるためです。
サケ丸
「香り」の変化|熟成により「熟成香(じゅくせいか)」を発する
熟成された日本酒の最大の特徴は、「熟成香(じゅくせいか)」と呼ばれるドライフルーツ、スパイス、キノコのような香りです。
熟成香は熟成期間が長いほど香りが強くなりますので、最初は熟成年数が浅い古酒から飲み始めることをおすすめします。
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「味わい」の変化|甘みと苦味が調和した奥深い味わいに変わる
古酒は熟成によって酸味の角が取れ、甘みと苦味のバランスが調和した奥深い味わいに変化します。
例えばフレッシュでアルコールの荒々しさが残る「新酒」も、熟成させることでアルコールの角が取れてなめらかになり、味に深みが出るのです。
この変化は、熟成環境や日本酒の原料によって変わりますので、造り手の蔵元でさえどんな味になるのか飲んで見るまで分からないのです。
さやかちゃん
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古酒(長期熟成酒)には3つのタイプがある
長期熟成酒研究会では、古酒(長期熟成酒)を醸造の仕方、貯蔵・熟成の仕方、熟成年数によって3つのタイプに分類しています。
濃熟タイプ(本醸造酒、純米酒を熟成)
常温で熟成させ、色や香り、味わいが劇的に変化した個性豊かな古酒です。
脂分が多い料理、甘い食べ物と相性が良いです。
中間タイプ(本醸造酒、純米酒、吟醸酒、大吟醸酒を熟成)
低温と常温を併用して熟成させ、香りや味わいは濃熟タイプと淡熟タイプの中間に位置する古酒です。
程よい甘みや酸味のある食べ物と相性が良いです。
淡熟タイプ(吟醸酒、大吟醸酒)
吟醸酒のフルーティーな味や香りを残しつつ、わずかな苦味が加わった深みのある古酒です。
甘味や酸味の少ないさっぱりとした料理と相性が良いです。
古酒(長期熟成酒)の温度で変わる味や香り
日本酒は温度が5℃違うだけで香りや味わいがガラリと変わる繊細なお酒です。
一般的に、日本酒は温めると甘み・旨味・コクなどの味わいや香りが引き立ち、逆に冷やすと感じにくくなります。
いろんな温度で飲んでみて、自分にピッタリの温度帯を見つけるのも古酒の楽しみ方の一つでしょう。
淡熟タイプのおすすめの温度|10℃(花冷え)~15℃(涼冷え)
淡熟タイプは「吟醸酒」「大吟醸酒」を熟成させた日本酒ですので、フルーティーな味や香りが特徴です。
この特徴を生かして、10℃(花冷え)~15℃(涼冷え)にしますと、適度に香りが抑えられてスッキリとした口当たりになります。
関連記事:【日本酒の冷酒】全3種類をご紹介|冷酒の「呼び名」「味わい」は温度によって変わる
濃熟タイプ・中間タイプのおすすめの温度|常温~40℃(ぬる燗)
一般的には常温で飲むことの多い濃熟タイプ・中間タイプですが、40℃のぬる燗にしますと、熟成香の豊かな香りを楽しむことができます。
サケ丸
関連記事:お燗酒の作り方|湯煎と電子レンジによる日本酒の温め方のコツとは?
古酒(長期熟成酒)は体に優しいお酒
日本酒やワインなどのお酒は、熟成させることによって口あたりが柔らかくマイルドな味わいに変わります。
江戸時代から認められていた古酒(長期熟成酒)の身体への効用
江戸時代の文献「訓蒙要言故事」には「新酒は、頭ばかり酔う。熟成酒は、からだ全体が潤うように気持ち良く酔う」と書かれていたほどで、昔から古酒は体に優しいお酒として認知されていたのです。
古酒(長期熟成酒)は「酔い覚めが良さ」も魅力
(引用:長期熟成酒研究会ホームページ)
古酒(長期熟成酒)は、飲んだ後の「酔い覚めが良さ」も魅力の1つです。その理由はお酒に含まれる「水」にあります。
上の図にあるように、新酒はアルコール分子がむき出しで、アルコールの臭や味、そして身体への刺激がとても強い状態です。
一方、古酒は時間の経過とともに水分子がアルコール分子を包み込みますので、アルコールの刺激が抑えられて身体への負担が少なくなると言われています。
まとめ
今回は、日本酒の古酒(長期熟成酒)についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
出来たてのフレッシュな味わいが楽しめる生酒と違って、古酒(長期熟成酒)は熟成させることによって深みのあるまろやかな味わいに変化すること、古酒は酔い覚めがよく体への負担が少ないことをお分かりいただけたのではないでしょうか。
熟成に手間隙かかる分お値段は少々高めですが、本記事をきっかけに古酒(長期熟成酒)の魅力に触れるきっかけになれましたら幸いです。
- ワインやウィスキーのように、日本酒も熟成によって深い味わいに変化します。
- 日本酒の醸造年度は7月1日から始まって6月30日までを1年としていますが、古酒は現在の醸造年度よりも前に造られたお酒を指します。
- 長期熟成酒は、最初から熟成酒を造るために醸造した日本酒で、3年、5年、10年と熟成を重ねたものがある。
- 日本酒はアルコール度数が15度前後と比較的高いく腐ることがないため、「賞味期限」の記載義務がない。
- 日本酒は熟成させることで無色から薄い黄色、薄い茶色、濃い茶色へと変化する。
- 熟成された日本酒は、「熟成香」と呼ばれるドライフルーツやスパイス、樹木、キノコのような熟成感のある甘い香りが特徴です。
- 日本酒は熟成することにより酸味の角が取れ、甘みと苦味のバランスが調和した奥深い味わいになる。
- 長期熟成酒研究会では、古酒(長期熟成酒)を醸造の仕方、貯蔵・熟成の仕方、熟成年数によって①濃熟タイプ、②中間タイプ、③淡熟タイプに分類している。
- 古酒(長期熟成酒)のおすすめの温度は15℃(涼冷え)~40℃(ぬる燗)で、熟成酒特有の甘味や酸味、香ばしい香りを楽しむことができる。
- 古酒(長期熟成酒)は、飲んだ後の「酔い覚めが良さ」も魅力の1つです。