日本酒で使う酒米は炊かずに蒸す!|麹・酒母・醪で使う蒸し米は外硬内軟が基本

蒸したお米蒸した

さやかちゃん

日本酒造りで使うお米は、なぜ炊かずに「蒸す」のですか?

サケ丸

「外硬内軟」といって、表面はサラサラで中はシットリとした蒸し米が酒造りに適しているからだよ!

私たちが普段食べているお米は炊飯ジャーで炊いて食べますが、日本酒造りでは蒸した米を使います。

日本酒造りで使う米は炊かずに蒸す

それでは、なぜお米を炊かずに蒸すのかというと、日本酒の様々な醸造工程で使われるお米は、「外硬内軟」と呼ばれる蒸したお米が適しているからです。

サケ丸

外硬内軟の状態に蒸かしたお米は、食べるとパサパサして美味しくないんだよ。

さやかちゃん

蒸し米は直接食べても美味しくないけど、日本酒造りには理想の状態なんですね!

そこで本記事では、日本酒の醸造工程で使われる蒸し米について、以下の2つを中心に解説いたします。

本記事で解説すること

  1. 日本酒造りで使われるお米はなぜ炊かずに蒸すの?
  2. 蒸し米は日本酒の醸造工程の中でどのように使われているの?

酒造好適米(酒米)は「外硬内軟」な状態を作りやすいとされています。山田錦、五百万石、美山錦を代表とする酒造好適米については以下の記事で解説していますので、あわせてご覧くださいませ。

精米された白米 酒造好適米(酒米)とは?|酒造りに特化した酒造好適米が持つ4つの性質

日本酒造りで使うお米を炊かずに蒸す4つの理由

お米は炊かずに蒸す

(出典:新潟の地酒 ふくきん本店

蒸し米とは、甑(こしき)という大型の蒸籠(せいろ)を入れた釜でお米を蒸したものです。

私たちが普段食べているご飯は炊飯器で炊きますが、日本酒で使うお米は100℃近い高温の乾燥した蒸気で蒸した「蒸し米」が使われます。

それでは、なぜ「炊く」のではなく「蒸す」のでしょうか?その理由は、以下の4つです。

お米を蒸す理由

  1. 蒸し米を酒造に適した「外硬内軟」にするため
  2. 麹菌が繁殖しやすい環境にするため
  3. お米のデンプン質をβ型(生でんぷん)からα型(蒸米)にするため
  4. お米を殺菌するため

理由①:日本酒の醸造に適した「外硬内軟」な状態にするため

日本酒造りには外硬内軟な蒸し米が最適

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外硬内軟(がいこうないなん)とは、米粒の外側は硬くて粘りがなく、内側は柔らかくてしっとりしたのお米の状態をいいます。

日本酒は、複雑な工程を経て造られますが、特に「麹造り」と「酒母・醪造り」では、外硬内軟な蒸し米が求められます。

麹造り|麹の菌糸が米の中心部に程良く入った良質な麹になる

麹菌の破精込みの違いによる麹の性質

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日本酒は、麹の出す酵素によってお米のデンプンを糖分に変えて、その糖分を酵母がアルコールに変えることで造られます。

外硬内軟な蒸し米で造られた麹は、麹菌の菌糸が米の表面に広がって中心部にも入り込んでいるため、麹が出す酵素力(栄養素を分解する力)が強く、お米のデンプンを効率的に糖分に変えることができます。

蒸し米の状態による酵素力の違い
蒸し米の状態 麹の菌糸の繁殖具合 酵素の強弱
表面が柔らかく内側が硬い 麹菌の菌糸が米の表面に広って中心部に入り込まない ばか破精
ぬり破精
酵素力が弱い
表面が硬く内側が柔らかい(外硬内軟) 麹菌の菌糸が米の表面に広がって中心部にも入り込んでいる 総破精
突き破精
酵素が強い

サケ丸

麹造りは失敗するとその後の醸造工程が全て台無しになるから、とても重要な工程なんだ。

関連記事:麹(こうじ)とは?|美容や健康効果もある「こうじ酵素」は日本酒造りで必須の栄養素!

酒母・醪造り|蒸し米がゆっくり溶けると美味しい日本酒に仕上がる

酒母や醪(もろみ)造りでは、デンプンの糖化やアルコール発酵がじっくり時間をかけて行われたほうが日本酒の味や香りが良くなります。そのため、酒母や醪の中でゆっくり溶ける外硬内軟な蒸し米が最適です。

サケ丸

蒸し米が柔らかくて一気に解けると、糖が過剰に供給されて酵母の発酵効率が低下してしまうんだ。

さやかちゃん

あと、ゆっくり時間をかけて発酵させた日本酒は香りが華やかなんですよね ♪

関連記事:吟醸酒とはどんな日本酒?|吟醸酒と大吟醸酒の違いとともに詳しく解説します!

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理由②:麹菌が繁殖しやすい吸水率33%程度の環境にするため

飯米と蒸し米の吸水率は以下のとおりです。

お米の吸水率

  • 蒸し米:37~40%
  • 飯 米:60%~70%
  • 麹菌が繁殖しやすい吸水率:35~40%程度

麹菌が繁殖しやすい環境は33%程度と言われていますので、蒸し米の方が麹菌の繁殖に最適な環境になるのです。

さやかちゃん

お米を炊くと水分が多くなりすぎて、麹菌が活動しにくくなるんですね!
MEMO
お米に吸収させる水の量は「吸水率」という指標で表します。例えば、もとのお米の重量が100kgで吸水後が130kgであれば、吸水率は30%になります。

理由③:米のデンプンをβ型(生デンプン)からα型(蒸し米)にする

お米を蒸してβ型からα型に変える

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加熱前のお米は「β型(生デンプン)」と呼ばれ、そのままでは硬くて食べることができません。

一方、水を加えて加熱するとデンプン質は「糊化(こか)」により粘りが出て柔らかくなります。このような状態を「α型(蒸し米)」と呼びます。

日本酒で使われる酒米は、お米を蒸すことでデンプンをβ型からα型に変えて、糖化されやすい蒸し米の状態にして使います。

サケ丸

お米を炊くと粘りが出るのはでんぷんが糊(のり)のような状態(α化)になるからなんだ!

理由④:お米を殺菌するため

高温の蒸気で熱することによりお米を殺菌することができますので、その後の醸造工程を安全に進めることができます。

お米を蒸す作業は合計8回

日本酒の醸造工程でお米を蒸す回数

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蒸し米は、麹造りに使われる「麹米」と仕込みに使われる「掛け米」で合計8回作業が行われます。それぞれの工程に合わせた蒸し具合を調整する必要があるため、蔵人はこまめに温度を確認しながら外硬内軟な蒸し米を目指して作業が行なわれます。

酒母造り(2回)|米麹1回+酒母の仕込み1回=合計2回

酒母(しゅぼ)とは、「米麹・水・乳酸菌(速醸酛の場合に限る)」を混ぜて「水麹(みずこうじ)」を造り、そこに「蒸し米・酵母」を加えたものです。

酒母造りで使われる蒸し米は、米麹で使われるものが1回、酒母の仕込みで使われるものが1回の合計2回必要となります。

関連記事:日本酒の酒母とは?|酒母の造り方は【生酛・山廃酛・速醸酛】の3種類

醪造り(6回)|米麹3回+醪の仕込み3回=合計6回

醪(もろみ)とは、酒母(しゅぼ)に「蒸し米・米麹・水」を3回に分けて加えて(三段仕込み)アルコール発酵させたもので、出来上がった醪を搾ると日本酒(清酒)になります。

醪造りで使われる蒸し米は、米麹で使われるものが3回、醪の仕込みで使われるものが3回の合計6回必要となります。

関連記事:醪(もろみ)とは?|三段仕込みは多量の日本酒を造る伝統技術

蒸し米の出来は日本酒の質に影響する

稲穂とお燗酒

蒸し米は、麹(こうじ)、酒母(しゅぼ)、醪(もろみ)造りの工程で使われますので、蒸し米の良し悪しで日本酒の味わいが決まるといっても過言ではありません。

また、現在はお米を蒸してから冷却するまでの工程を自動で行う「連続式蒸米機」が普及していますが、甑(こしき)を使ったほうが良質な蒸し米に仕上がるため、麹用のお米や吟醸酒以上の日本酒には甑で蒸した蒸し米を使う蔵が多いようです。

まとめ

ここまで、日本酒造りで使われる「蒸し米」についてお話させていただきました。日本酒で使われる蒸し米は、私たちが普段食べているような「ご飯」と違って、「外硬内軟」なパサパサした状態が適しているんですね。

蒸し米の出来の良し悪しが、このあとに続く麹(こうじ)、酒母(しゅぼ)、醪(もろみ)造りの工程に影響を及ぼしますので、お米を蒸す工程は意外と知られていない日本酒造りの重要工程なのかもしれません。

●蒸し米とは、甑(こしき)という大型の蒸籠(せいろ)に入れたお米を釜で蒸したもの

●お米を「炊く」のではなく「蒸す」理由は以下の3つ。

 ①蒸し米を酒造に適した「外硬内軟」にするため

 ②お米のデンプン質をβ型(生でんぷん)からα型(蒸米)にするため

 ③お米を殺菌するため

●外硬内軟とは、米粒の外側は硬くて粘りがなく内側は柔らかくてしっとりした状態をいう。

●良質な麹や醪をつくるためにお米を外硬内軟な状態に蒸すことはとても重要。

●蒸したお米の水分含有量は30~40%で麹菌が繁殖しやすい環境にある。

●お米を蒸すことによってお米のデンプンがα化(デンプン質はおいしく消化されやすい状態)される。

●高温の蒸気で熱することによりお米が殺菌される。

●麹造りに使われる分と仕込みに使われる分(掛け米)で合計8回お米が蒸される。

●蒸し米は、麹、酒母、醪造りの工程で使われることから蒸し米の良し悪しで日本酒の味わいが決まると言っても過言ではない。

●麹用のお米や吟醸酒以上の日本酒は甑で蒸した蒸し米を使う蔵が多い。

 

 

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