日本酒のイメージを低下させた「三増酒」とは?|三増酒が誕生した背景と現状

終戦を迎えた静かな海

さやかちゃん

「三増酒」ってどんな日本酒なんですか?

サケ丸

戦後から高度成長期までの間、市場に出回っていた低品質なお酒のことだよ。日本酒のイメージを悪化させ、消費低下につながったと言われているんだ。

日本酒のイメージを悪化させた「三増酒(さんぞうしゅ)」というお酒をご存知でしょうか?

  • 悪酔いする
  • 頭が痛くなる
  • 二日酔いになりやすい
  • 甘くてベタベタする

日本酒に対するこのような悪いイメージは、太平洋戦争後に誕生した三増酒による影響が大きいとされています。

それもそのはず、三増酒は日本酒に醸造アルコールを加えてかさ増しされて造られた低品質なお酒なのです。

さやかちゃん

醸造アルコールを入れてかさ増し…。あまり美味しそうではないですね。

でもご安心ください。悪酔いや二日酔いの代名詞にもなった三増酒は、2006年の酒税法改正により日本酒(清酒)として認められなくなりました。

そこで今回の記事では、日本酒の三増酒とはどのようお酒なのか、歴史的な背景を踏まえながら詳しく解説いたします。

三増酒は日本酒に2倍の醸造アルコールを加えて3倍にしたお酒

夏の空

三増酒の正式名称は「三倍増醸清酒」で、日本酒に2倍の量の醸造アルコールと味わいの調整のための添加物を加えて、3倍にかさ増しされて造られたお酒です。

三増酒は戦後の米不足の中で仕方なしに造られていた

なぜこのような日本酒が造られるようになったのでしょうか。その理由は、戦後の食糧難によるところが大きかったそうです。

太平洋戦争後の物資不足・食糧難の中、日本人の主食であるお米も手に入りにくい状況が続きました。

酒造用の酒米も統制により不足したため、市場での日本酒の供給不足が深刻な問題となりました。そこで、少ないお米で大量の日本酒を造ることができる三増酒が誕生したのです。

三増酒が誕生した理由

  • 戦後の食糧難の中、三増酒は少ないお米で大量の日本酒を造ることができた
  • 昔は低精米(米の表面をあまり削らないお米)で造られた雑味のある日本酒が多かったため、スッキリした味わいの三増酒はむしろ好まれた

さやかちゃん

三増酒は食糧難という厳しい社会情勢の中で誕生したのですね…。

三増酒は高度成長期に入っても金儲けのために造られ続けた

その後、お米が余るようになった高度経済成長期に入っても、以下のような理由により三増酒は造られ続けました。

高度成長期に入っても三増酒が造られた理由

  • 日本酒を醸造アルコールでかさ増しすることで、低コストで大量の日本酒を製造することができた
  • アルコール飲料の中で日本酒の需要が大きかったため、味の悪い三増酒でもよく売れ儲かった

サケ丸

高度成長期に入っても三増酒が造り続けられたことが、日本酒のイメージ低下につながったんだ!

さやかちゃん

儲けのために三増酒を造り続けていたなんて…。残念ですね。

三増酒はどのようにして造られていたのか?

三増酒は日本酒に2倍の醸造アルコールと添加物を加えたお酒

※クリックで拡大

それでは、三増酒はどのようにして造られていたのか、使われていた原料を中心に解説いたします。

醪(もろみ)に2倍の量の醸造アルコールを入れる

日本酒は醪(もろみ)を絞ることによって抽出されますが、三増酒は醪から絞られる日本酒の量に対して2倍の醸造アルコール(日本酒のアルコール濃度と同じになるよう水で薄めたもの)を入れます。

醸造アルコールとは、主にサトウキビを発酵させて蒸留した高濃度のアルコールで、味や香りはなく、体に害はありません。

醪(もろみ)とは?

蒸し米と米こうじ、仕込み水、酵母を混ぜ合わせて発酵させたもの。発酵した醪はドロドロとしたお粥のような状態で、絞ると液体(原酒)と固形物(酒粕)に分離される。

なお、醪のについては、「醪(もろみ)とは?|三段仕込みは多量の日本酒を造る伝統技術」もご紹介していますので、あわせてご参照くださいませ。

添加物(糖類・グルタミン酸ソーダ・酸味料)を入れる

醪(もろみ)に大量の醸造アルコールを入れると味が薄くなってしまいますので、味わいの調整のため糖類(ぶどう糖・水あめ)グルタミン酸ソーダ酸味料(乳酸・コハク酸など)などの添加物を加えます。

添加物の役割

  • 糖類(ぶどう糖・水あめ)⇒ 甘みを出す
  • 酸味料(乳酸・コハク酸など) ⇒ 酸味を付ける
  • グルタミン酸 ⇒ 旨味を出す

このように醪に醸造アルコールと添加物を入れることで、3倍の量の日本酒を造ることが可能になるのです。

さやかちゃん

う~ん…。これはもう日本酒ではないですね。

サケ丸

評判が良くない三増酒ですが、戦後の食糧難の中では貴重なお酒だったんだよ。

スポンサーリンク

三増酒は「ベタベタした甘いお酒」の代名詞になった

このように、三増酒には糖類やグルタミン酸ソーダなどの添加物を入れて味を調整していますので、日本酒本来のお米の旨味や風味とはかけ離れた味わいになります。いわゆる「ベタベタした甘いお酒」で、マズイお酒の代名詞にもなりました。

そのため、運悪く初めて飲んだ日本酒が三増酒だったら…、きっと日本酒が嫌いになるでしょうし、以下のようなアル添タイプの日本酒(醸造用アルコールが添加された日本酒)に対しても、悪いイメージを持つことでしょう。

アル添タイプの日本酒

  • 普通酒
  • 吟醸酒
  • 大吟醸酒
  • 本醸造酒
  • 特別本醸造酒

このように、日本酒受難の時代の象徴ともいえる「三増酒」ですが、

  • 1987年(昭和62年)に発売されたアサヒスーパードライによる「淡麗辛口」ブーム
  • 1970年代半ばに起こった地酒ブーム

など、消費者の趣向の変化や日本酒に求られる高品質化の流れの中で、日本酒業界の三増酒主流からの脱却が進みました。

サケ丸

アル添タイプの日本酒は、香りが華やかでスッキリとした辛口の味わいが特徴なんだ!

さやかちゃん

醸造アルコールが入った日本酒が低品質なんてことはないんですね!

関連記事:二日酔いや悪酔いは醸造アルコールが原因?|日本酒に醸造アルコールを入れる3つの理由

酒税法の改正により現在は三増酒の日本酒は存在しない

財務省

2006年酒税法改正(一部抜粋)
改正前 改正後
副原料(醸造アルコールを含む)の重量が、米・
米こうじ・水・粕(かす)の重量を超えない量
副原料(醸造アルコールを含む)の重量が、米・
米こうじの重量の50%を超えない量

2006年の酒税法改正により上記のような変更が行われ、現在は3倍までかさ増しできなくなりました。

また、法改正により三増酒は日本酒(清酒)として認められなくなり、リキュールや雑酒として分類されるようになりました。

MEMO
現在は醸造アルコールの使用量は白米1トンあたり280リットル以下に制限されています。ここまでアルコール添加した日本酒は、「二倍増醸酒(二増酒)」ということになります。

まとめ

日本酒のイメージを低下させた三増酒ですが、戦時中の食糧難の中では貴重な嗜好品として役割をはたしていました。

現在、スーパーなどで販売されている日本酒は、特定名称酒や普通酒など酒蔵や酒造メーカーの努力により高品質なものばかり。平和な時代だからこそ、私たちはいま、おいしい日本酒を楽しむことができるんですね。

  • 三増酒は、戦争後の米不足の時代に生み出された。
  • 戦後、お米が余るようになっても、低コストで大量の清酒を製造ことができことから三増酒は造られ続けた。
  • 三増酒は、醪(もろみ)から生成される日本酒の3倍まで醸造アルコールと添加物(糖類、グルタミン酸ソーダ、酸味料)が添加され造られる
  • 三増酒は、2006年の酒精法改正により認められなくなり、現在は存在しない

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です