日本酒のラベルでよく見かける「清酒」という表示。
「清酒=日本酒」というイメージがあるものの、清酒の本来の意味をご存じの方は少ないと思います。
さやかちゃん
サケ丸
実は、清酒は法律で明確に定義されていて、「ある作業」を行わないと清酒として名乗ることができません。
また、近年の海外での日本酒ブームにより、新たに「日本酒の定義」が定められています。
サケ丸
さやかちゃん
そこで本記事では「清酒」について、以下の2つを中心に解説いたします。
- 「清酒」とはどのようなお酒なのか?
- 「清酒」と「日本酒」の違いとは?
- 海外での日本酒ブームによる「日本酒」の定義とは?
さやかちゃん
目次
清酒は「米・米麹・水」を発酵させた醪(もろみ)を濾したお酒
清酒とは、「米・米麹(こめこうじ)・水」をアルコール発酵させて造られた醪(もろみ)を濾した(こした)お酒のことです。
酒母に「蒸し米・米麹・水」を3回に分けて仕込み(三段仕込み)、糖化とアルコール発酵させたもの。発酵が進むと3~4週間で醪が完成し、搾ることで日本酒が抽出されます。
なお、醪(もろみ)の詳細は、醪(もろみ)とは?|三段仕込みは多量の日本酒を造る伝統技術でもご紹介していますので、あわせてご参照ください。
それでは、法律の「清酒」はどのように定義されているのか、詳しく見ていきましょう。
清酒は酒税法で定義が明確に定められている
(出典:日本酒造組合中央会ホームページ)
法の規定で「清酒」という言葉が使われるようになったのは明治以降で、現在は果実酒(ワイン)、その他醸造酒(どぶろく)などとともに「醸造酒類」に区分されています。
酒税法では「清酒」を以下のとおり定義しています。
酒税法第3条第7号
- 「米、米こうじ、水を原料として発酵させてこしたもの(アルコール分が22度未満のもの)」
- 「米、米こうじ、水および清酒かす、その他政令で定める物品を原料として発酵させてこしたもの(アルコール分が22度未満のもの)」
上記の条文を分かりやすくまとめると、以下のとおりです。
- 米・米麹(こめこうじ)・水を原料とすること
- 発酵させた醪(もろみ)を必ず濾す(こす)こと
- アルコール度数は22度未満にすること
- 副原料は他政令で定めたものを使用すること
酒税法では、原料に「米・米麹(こめこうじ)・仕込み水・その他副原料」を使い、発酵した醪(もろみ)を濾す(こす)作業を行ったお酒を「清酒」としています。
さやかちゃん
清酒は「濾す(こす)」作業が必須|にごり酒とどぶろくの違い
区分 | にごり酒 | どぶろく |
原料 | 蒸し米・米麹(こめこうじ)・水 | |
酒税法の分類 | 清酒 | その他醸造酒 |
濾す作業 | あり | なし |
日本酒は、上槽(じょうそう)の工程で醪を濾して液体(日本酒)と固形物(酒粕)に分離しますが、それでは白濁した見た目が特徴の「にごり酒」と「どぶろく」は清酒なのでしょうか。
酒袋に入れた醪を搾って液体(日本酒)と固形物(酒粕)に分離する作業のこと。酒税法の決まりで日本酒(清酒)を名乗るためには醪を濾す(こす)作業が必要になりますが、上槽ではこの「濾す」作業を行います。
なお、上槽については「上槽(じょうそう)とは?|搾り方(荒走り・中取り・責め)で変わる日本酒の味わい」で詳しく解説していますので、よろしければご覧くださいませ。
「どぶろく」は濾す作業を行わずに醪をそのまま瓶詰したお酒ですので、清酒ではなく「その他醸造酒」に分類されます。
関連記事:日本酒のどぶろくとは?|にごり酒・甘酒との違いや美容・健康効果を徹底解説
「にごり酒」は目の粗い酒袋を使って醪(もろみ)濾したお酒ですので、「清酒」に分類されます。
関連記事:にごり酒とは?|トロリとした口当たりと優しい甘みは若い女性に大人気!
サケ丸
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4つの視点から解説|「清酒」と「日本酒」の違いとは?
上槽の技術が確立し江戸時代から使われるようになった「清酒」と、私たちにとってなじみ深い「日本酒」はどのような違いがあるのでしょうか?
本記事では4つの視点から両者の違いについて解説いたします。
①言葉の起源の違い|清酒は濁酒、日本酒は洋酒を区別する言葉
清酒のルーツは、奈良時代に豊作祈願などの神事で供えられていた濁酒(どぶろく)です。このお酒が上級階級で飲まれるようになり、次第に一般庶民へと広がっていったのです。
その後、江戸時代に入ると上槽(じょうそう)の技術が確立され、無色透明な「澄み酒」(現在の清酒)が造られるようになりました。
「清酒」は、それまでの濁酒(どぶろく)に対して、「清く澄んだお酒」という意味で使われるようなりました。
一方、「日本酒」という言葉が使われるようになったのは明治時代です。
明治に入ると海外からビールやワインなどの醸造酒が輸入されるようになり、これらの洋酒と区別するために「日本酒」という言葉が使われるようになったのです。
- 清酒
⇒江戸時代に「どぶろく」と区別するために使われるようになった - 日本酒
⇒明治時代に西洋酒と区別するために使われるようになった
さやかちゃん
②辞書での違い|日本酒は清酒を含む広い意味で定義されている
日本酒と清酒を辞書で調べてみますと、以下のように説明がされています。
- 日本酒
⇒日本在来の醸造法によって造った酒。特に、清酒をいう。 - 清酒
⇒米・米麹を原料として発酵させ漉して製造した日本特有の澄んだ酒。
辞書の説明では、日本酒は清酒よりも少し広い意味で定義されているのが分かるかと思います。
つまり、日本酒は日本の伝統的な醸造法で造られたお酒の総称で、イメージにすると以下のとおりとなります。
③色の違い|清酒は透明、日本酒は濁酒を含めて使われている
醪(もろみ)を濾して(こして)抽出された原酒は薄にごりで黄金色をしていますので、「滓引き(おりびき)⇒濾過(ろか)」の工程を経て無色透明な「清酒」が出来上がります。
一方、「上槽」「滓引き」「濾過」をしていない白濁した日本酒(清酒)もあります。
- どぶろく → 「上槽」していないお酒(その他醸造酒)
- にごり酒 → 「滓引き」「濾過」を行っていないお酒(清酒)
- 滓がらみ → 「滓引き」「濾過」を行っていないお酒(清酒)
清酒と聞くと、「透明で澄んだ日本酒」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、日本酒はこうした色の違いも含めて広い意味で使われています。
さやかちゃん
④原料・生産地の違い|国産原料&国内生産のみ日本酒を名乗れる
昨今の世界的な和食ブームの中で、日本酒の人気は確実に高まりつつあります。この流れは、日本酒の海外生産に拍車をかけ、大手酒造メーカーによる海外生産や、日本酒の外国資本による現地生産が増えています。
日本酒のグローバル化の流れを受けて、国税庁は2015年に日本酒の定義を以下のように定義しました。
- 米および米麹は国内産米のみを使用したものであること
- 日本国内で製造する必要がある
このような新たな定義により、外国産の米や米麹を原材料とした清酒や、海外で造られた清酒は「日本酒」を名乗ることができなくなりました。
サケ丸
まとめ|時代の流れの中で清酒(日本酒)の定義も変化している
今回は、清酒と日本酒の違いについて解説しましたがいかがだったでしょうか。
「清酒」は法律の規定により醪(もろみ)を必ず濾す(こす)作業が必須であること、日本酒は透明なものや薄濁のものがあり「清酒」を含む広い意味で使われていることをご理解いただけたのではないでしょうか。
「透明な日本酒」と言う意味で使われるようになった「清酒」ですが、白濁したにごり酒や滓がらみも甘酸っぱい味わいと豊富な栄養素から若い女性を中心に人気が高まっています。また、和食ブームにより海外でも日本酒を飲まれる方が増えていますので、今後「日本酒」の認知度がますます高まりを見せていくのではないでしょうか。
- 清酒とは、米・米麴・酵母をアルコール発酵して造られた醪を、上槽と呼ばれる作業で搾って抽出した澄んだお酒のこと。
- 清酒のルーツは、奈良時代の豊作祈願などの神事で供えられていた「どぶろく」に似た白濁したドロドロしたお酒です。
- 清酒は、上槽が確立される前の白濁したお酒(どぶろく)に対し、「清く澄んだお酒」という意味合いで使われるようになった。
- 清酒という言葉が酒税法上で使われるようになったのは明治以降で、現在は果実酒(ワインなど)やその他醸造酒(どぶろくなど)とともに醸造酒類に分類されている。
- 酒税法上の決まりで、清酒と名乗るためには原料に米、米麹、仕込み水、その他副原料を使い、製法として発酵した醪を濾す(こす)作業が必要となる。
- 醪を濾さずにそのまま瓶詰めした「どぶろく」は、「その他醸造酒」に分類されている。
- にごり酒は目の粗い酒袋を使って醪を濾しているため、清酒に分類されている。
- 日本酒という言葉が使われるようになったのは明治以降で、ビールやワインなどの洋酒と区別するために使われるようになった。
- 日本酒は辞書では「日本在来の醸造法によって造った酒。特に、清酒をいう。」と定義されており、清酒を含んだ広い意味で使われている。
- 国税庁による2015年の定義により、外国産の米や米麹を原材料とした清酒や、海外で造られた清酒は「日本酒」を名乗ることができなくなった。