さやかちゃん
サケ丸
日本酒の原料で使われる「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」は「酒米(さかまい)」とも呼ばれ、日本酒造りに適した酒造り専用のお米です。
酒米は、私たちが普段食べている飯米にはない「4つの性質」があり、美味しい日本酒を造るうえで必須の要件となります。
さやかちゃん
そこで本記事では、日本酒造りで使われる酒米について、以下の3つを中心に解説いたします。
- 酒米と飯米は何が違うの?
- 美味しい日本酒を造るために必要な酒米の4つの性質とは?
- 酒米は日本酒の製造工手でどのように使われているの?
なお、酒米のトップブランド「山田錦」「五百万石」「美山錦」や全国で栽培されている酒米については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧くださいませ。

目次
酒米(酒造好適米)が持つ「4つの性質」とは
私たちが普段食べているササニシキやコシヒカリなどの「飯米」と、日本酒造りで使われる「酒米」は性質が全く異なることをご存じでしょうか?
実は、「飯米」で美味しい日本酒を造ることはとても難しいのです。
その理由は、日本酒造り用に特化した酒米には、醸造適性(醸造のしやすさ)の面で飯米にはない以下4つの性質が求められるからです。
- 米粒が大きい
- 心白(しんぱく)の割合が高い
- デンプン質の含有量が多くタンパク質と脂質の含有量が少ない
- 水を吸いやすく糖化されやすい
サケ丸
さやかちゃん
性質1:米粒が硬くて大きい|精米のときに米が割れにくい
日本酒造りで使われる酒米は、米粒が硬く大粒である必要があります。
お米の表面には日本酒の味わいのうえで雑味や渋みの原因となるタンパク質や脂質が多く含まれていて、この部分を削る「精米」という作業が必要です。
お米の粒が小さくて柔らかいと精米のときに米が砕けてしまうため、酒米には粒の大きさと硬さが求められます。
サケ丸
さやかちゃん
性質2:心白(しんぱく)が大きい|良質な米麹を造ることが可能
心白とは、お米の中心にあるデンプン質が粗く隙間がある部分のことです。心白のあるお米はデンプン質に隙間があるため、酒造りにおいて以下のような利点があります。
- 米の中心に隙間があるため麹菌の菌糸が中まで入り込みやすい
⇒内側からデンプン質を糖分に変えることができる - 吸水性がよい
⇒良い蒸し米ができる - 酒母や醪の中で溶けやすい
⇒糖化しやすくなり味乗りの良い日本酒になる
山田錦や五百万石など優れた酒造適性を持つ品種は、心白と呼ばれるデンプン質が大きいのが特徴です。
サケ丸
性質3:デンプンが多くタンパク質が少ない|雑味のない味になる
お米のデンプンは麹(こうじ)が出す酵素によって糖分に変わり(糖化)、糖分は酵母によってアルコールと炭酸ガスに変わります(アルコール発酵)。
酒米はデンプンを豊富に含んでいるため、大量の糖分を消費するアルコール醗酵に適しています。
一方、お米の表面にあるタンパク質や脂質は日本酒のコクや旨味になる成分ですが、多すぎると雑味や苦味を感じるようになります。
酒米はタンパク質と脂質が少ないため、サッパリとした淡麗な味わいの日本酒に仕上がります。
サケ丸
性質4:水を吸いやすく糖化されやすい|良質な蒸し米が出来る
蒸し米は、米粒の外側はパサパサしていて内側はしっとりしている「外硬内柔(がいこうないなん)」が理想されています。
酒米は、浸漬(しんせき)と呼ばれる米に水を吸わせる作業で、米の中心部までスムーズに吸水ことができます。
その結果、お米を蒸したときに中心部のデンプンが糊状(のりじょう)になりますので、麹菌による糖化がされやすくなります。
さやかちゃん
関連記事:日本酒造りの洗米と浸漬(しんせき)とは?|洗米と浸漬は吸水率が重要
スポンサーリンク
適米は麹菌のはぜ込みより中心部から糖化される
私たちが普段食べている飯米と酒米の一番の違いは「心白」の有無にあります。
飯米の中心部はデンプンがぎっしり詰まっていて水晶のように透明であるため、「水晶米」と呼ばれています。
一方、酒造好適米の中心部はデンプン質が荒く隙間がたくさんあり、光が屈折して白っぽく見える「心白」があります。
適米は、この隙間があることで麹菌の菌糸が入り込み、麹菌の出す酵素によって米の中心部から糖化します。
サケ丸
さやかちゃん
関連記事:麹(こうじ)とは?|日本酒造りにおける麹の役割を分かりやすく解説します!
日本酒造りのさまざまな製造工程で使われる酒米
酒米は大型の蒸籠(せいろ)で8回にわたり蒸され、日本酒のさまざまな醸造工程で使われていますが、「麹米(こうじまい)」「掛米(かけまい)」「酒母米(しゅぼまい)」の3つに分類されます。
掛米(全体の7割):醪(もろみ)を仕込むときに使われる酒米
醪(もろみ)を仕込む際に使われるお米が「掛け米」です。
掛け米には大量のお米が必要なため、比較的安価な飯米を使うことが多かったようですが、最近は掛け米にも酒造好適米を使う酒蔵が増えているようです。
麹米(全体の2割):麹の原料になる酒米
お米のデンプン質を糖分に分解する際に米麹が必要になりますが、この米麹の元となるのが「麹米」です。
良質で元気な麹菌の働きが日本酒の出来栄えを決めるため、麹米の品質はとても重要となります。
関連記事:麹(こうじ)とは?|美容や健康効果もある「こうじ酵素」は日本酒造りで必須の栄養素!
酒母米(全体の1割):酒母造りで使われる酒米
酒母の原料は「蒸し米・麹・水・酵母」で、アルコール発酵に必要な大量の酵母を繁殖させることを目的に造られます。
この酒母を造るときに使われるお米が「酒母米」です。
関連記事:日本酒の酒母とは?|酒母の造り方は【生酛・山廃酛・速醸酛】の3種類
酒米の「精米歩合」で日本酒の味わいはガラリと変わる
精米歩合とは、お米の表面をどれだけ削ったかを示す指標です。
例えば、精米歩合60%とはお米の表面(ぬか)を40%削って、残った部分が60%の状態です。
お米をどのくらい削るのかによって、出来上がった日本酒の味わいは驚くほど変わります。
- 精米歩合の数値が低い(お米をたくさん削る)
⇒スッキリとした雑味のない酒になる - 精米歩合の数値が高い(お米をあまり削らない)
⇒味が濃く旨味の多いお酒になる
ただ、「精米歩合の数値が低い=おいしい日本酒」とは限らないところが日本酒の奥深いところ。
あえてお米を削らないことで、お米の素朴な旨味やコクを感じられるお燗向きの日本酒を造ることも可能です。
酒米をどのくらい削るかは、蔵元の目指すコンセプトや味わいによって調整されています。
サケ丸
関連記事:精米歩合とはお米の削り具合を示す指標|精米歩合で変わる日本酒の味わいとは?
まとめ
いかがだったでしょうか。ご飯として食べる「飯米」と日本酒造りで使われる「酒米」は全く別物ということで、意外だたのではないでしょうか。日本酒は「米・米麹・水」出来ているお酒ですので、原料の中でも酒米の品質は最も重要といえるでしょう。
品種改良を重ね、手塩にかけて育てた酒米で醸された日本酒は、まさに「米の恵みの酒」といえるでしょう。
●酒造好適米(酒米)には以下の4つの条件が求められる。
①米粒が大きいこと
②心白の割合が高いこと
③デンプン質の含有量が多くタンパク質と脂質の含有量が少ないこと
④水を吸いやすく糖化されやすいこと
●酒米と飯米の違いは「心白」が多いか少ないかにある。
●酒米はタンパク質や脂質が少ないため、食べると旨味やコクがあまりなく粘りのないパサパサした食感であまり美味しくない。
●酒米は「酒母米(しゅぼまい)」「麹米(こうじまい)」「掛米(かけまい)」に分類される。
●酒米の精米歩合で日本酒の味わいは変わる。
●精米歩合の数値が低い(お米をたくさん削る)とスッキリとした雑味のない酒になり、精米歩合の数値が高い(お米をあまり削らない)と味が濃く旨味の多いお酒になる。