サケ丸
さやかちゃん
一般的に日本酒の原料で使われる酒米はお米の表面をたくさん削った(磨いた)酒米が使われていますが、低精米酒(ていせいまいしゅ)はあえて削らない酒米で造られた日本酒(純米酒)です。
例えば、精米歩合60%の酒米を原料としている吟醸酒は、お米の表面を実に40%も削り落としています。今回ご紹介する低精米酒は、逆に精米歩合80%以上の酒米で造られた日本酒で、中には精米歩合90%のものもあるとか…。
サケ丸
そこで本記事は、低精米酒について以下の3点を中心に解説します。
- 低精米酒とはどのような日本酒なのか
- 低精米酒はなぜ造られるようになったのか
- 低精米酒の美味しい飲み方や料理とのペアリング
以前、お米の個性を味わえる純米酒についてご紹介しました。今回ご紹介する低精米酒は純米酒をより個性的にしたお米の味わいをガツンと味わえるお酒ですので、ぜひ最後までご覧くださいませ。

目次
低精米酒は「精米歩合80%以上」の酒米で造られた純米酒
低精米酒は純米酒の一種で、80%以上の低精米(お米の表面をあまり削っていないお米)で造られた日本酒です。
近年、高精米(お米の表面をたくさん削ったお米)で造られた吟醸酒や大吟醸酒などのお酒が日本酒のトレンドとなっていますが、そんな中で低精米酒は愛飲家を中心にひそかに注目を集めています。
- 高精米(精米歩合の値が低い)⇒お米の表面をたくさん削っている
- 低精米(精米歩合の値が高い)⇒お米の表面をあまり削っていない
例えば吟醸酒の精米歩合が60%、大吟醸酒が50%というように吟醸酒系の日本酒はお米をしっかり削っているのに対し、低精米酒で使われている酒米の精米歩合は80%~90%です。
私たちが普段食べているご飯の白米が精米歩合90%前後ですので、低精米酒はご飯とほぼ同じくらいしかお米を削っていないことになります。
- 吟醸酒:精米歩合60%
- 大吟醸酒:精米歩合50%
- 低精米酒:精米歩合80%~90%
- ご飯の白米:精米歩合90%前後
さやかちゃん
関連記事:精米歩合とはお米の削り具合を示す指標|精米歩合で変わる日本酒の味わいとは?
あえて米を削らない味わい|お米の素朴な風味が注目されている
あえてお米を削らない低精米酒の味わいや香りの特徴は以下のとおりです。
- 香 り:お米の控えめで穏やかな香りを感じる
- 味わい:お米本来の味わいがあり旨味が濃厚
お米はなぜ削る必要があるのでしょうか?その理由は、お米の表面に多く含まれている「タンパク質」と「脂質」にあります。
タンパク質と脂質は日本酒の旨味成分ですが、多すぎると味が重くなったり雑味を感じるようになります。そのため、スッキリとした淡麗な味わいの日本酒造りを目指す蔵人は、お米を手間ひまかけて丹念に削るのです。
- お米をたくさん削る(精米歩合の数値が低い)
⇒スッキリとした味わいのお酒になる - お米をあまり削らない(精米歩合の数値が高い)
⇒味が濃く雑味の多いお酒になりやすい
お米の表面を50%削った酒米で造られる「純米大吟醸酒」や80%も削る工芸品のような日本酒もありますが、近年は「お米をたくさん削る=美味しい日本酒」という高精米神話に一石を投じ、精米機が発達していなかった昔ながらの素朴なお米の風味と旨味を引き出した「低精米酒」が注目を集めています。
さやかちゃん
あえて米を磨かない酒造り|低精米酒は蔵人の思いから生まれた
日本酒の原料となるお米は栽培されている地域の土、水、気候などの自然環境により同じ品種でも違った個性を持っています。
このような大自然の恵みの中で大切に育まれた自慢のお米ですので、
- 綺麗な酒質にするため大切に育てたお米を削るなんてもったいない!
- 逆にお米自身が持っている個性を日本酒に活かすことは出来ないか?
そんな蔵人たちのお米に対する思いから低精米酒が造られるようになりました。
サケ丸
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低精米酒は「高品質」な酒米と「高度」な醸造技術が必要
低精米酒で使われる酒米|高品質であることが大前提
低精米酒は、単純に低精米の酒米を原料に使えばいいというものではありません。なぜなら、低精米の酒米で造られた日本酒は、一般的には味が濃くて雑味が多い酒質になりやすいからです。
近年はお米の品種改良により酒米の高品質化が進み、タンパク質や脂質の少ない酒米を栽培することが可能になりました。
これにより、低精米でも雑味を抑えたお米本来の旨味が味わえる低精米酒を造ることが可能になったのです。
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低精米酒は失敗(腐造)のリスクが高い|高度な醸造技術が必要
また、お米の表面をあまり削らないと米の粒が大きくなり、米麹(こめこうじ)が出す酵素によってお米が十分溶け切らない可能性が高くなります。
お米が溶け切らないと糖化が十分に進まず雑菌が繁殖しやすい環境になりますので、腐造のリスクが高まります。近年は、醸造技術が格段に向上したことにより、低精米でも安全で安定的に低精米酒を造ることが可能になりました。
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低精米酒のおすすめの飲み方と料理とのペアリング
低精米酒は、穏やかな香りとお米の濃厚で強い旨味を味わえるお酒です。主張しすぎない香りは料理の風味を邪魔することはありません。そのため、食中酒として楽しんでいただきますとお酒と料理の相乗効果が期待できます。
乳製品との相性が格別|低精米酒は料理との相性が多彩
低精米の強い旨味とコクは味の濃い食材や料理よくマッチします。そのため料理との相性が多彩で、特にクリームやバターなどの乳製品との相性は格別です。ぜひ様々な料理との相性を試していいただきまして、料理との相乗効果をお楽しみください。
和食 | 中華 | 洋食 |
●タレの焼き鳥 ●おでん ●肉じゃが ●塩辛 |
●餃子 ●酢豚 ●八宝菜 ●焼豚 |
●ハンバーグ ●クリームシチュー ●グラタン ●ビーフステーキ |
お燗酒がおすすめ|低精米酒は温めると米の風味を存分に味わえる
呼び名 | 温度 (徳利の温度) | 香味の特徴 |
飛切燗(とびきりかん) | 60℃(熱い) | 強い香りと刺激的な辛口の味わい |
熱燗(あつかん) | 55℃(やや熱い) | シャープな香りと辛口の味わい |
上燗(じょうかん) | 50℃(湯気が出て熱く感じる) | 香りや味わいが強く感じられる |
ぬる燗(ぬるかん) | 45℃(やや温かい) | 香りの輪郭がはっきり感じられる |
人肌燗(ひとはだかん) | 40℃(ほんのり温かい) | 味わいがふくらみはじめる |
日向燗(ひなたかん) | 35℃(温度を感じない) | ほんのりと香味が感じられる |
常温(じょうおん) | 20℃(ほんのり冷たい) | 柔らかい香りで味わいはソフト |
低精米酒は、お燗にすることでお米の香りと旨味・コクがさらに引き立ちます。温度帯としては、常温(20℃程度)から飛切燗(55℃程度)まで幅広い温度で楽しむことができますが、温度が上がるごとに辛さが目立ってしまったり、香りや味が重くなることがあります。まずは常温(20℃程度)からぬる燗(40℃)で飲んでみることをおすすめします。
関連記事:お燗酒の作り方|湯煎と電子レンジによる日本酒の温め方のコツとは?
まとめ
いかがだったでしょうか。個性米の日本酒がもてはやされる中で、あえてお米を磨かない低精米酒は蔵人たちのお米に対する思いから生まれたお酒だったんですね。お米の素朴な風味が楽しめる低精米酒は、香りや旨味が引き立つお燗酒にピッタリですので、ぜひお試しください。
- 低精米酒で使われているお米の精米歩合は80%以上と精米率がかなり低め。
- 低精米のお米で造られた日本酒は味が濃くて雑味が多い味わいになりやすいため、高度な醸造技術を必要とする。
- 低精米酒は、おだやかな香りとお米の深い旨味とコクが特徴で、食中酒として飲むとお酒と料理の相乗効果が期待できる。
- 低精米酒は、お燗にすることでお米の香りと旨味・コクがさらに引き立つ。
- 低精米のお米で造られた日本酒は、お米本来のふくよかな香りとコクのある味わいから、特にクリームやバターなどの乳製品と相性が良い。