さやかちゃん
サケ丸
日本酒には「特撰・上撰・佳撰」とラベルに表示されたお酒があります。
- 特選が高価で佳撰が安価というイメージがあるけど…、実際はどうなの?
- 純米酒や吟醸酒などの「特定名称酒」とはどんな違いがあるの?
このような疑問にお答えするため、本記事では「特撰・上撰・佳撰」について、以下の2つを中心に解説いたします。
- 「特撰・上撰・佳撰」とは何を表しているのか?
- 「特撰・上撰・佳撰」と「特定名称酒」は何が違うのか?
「特撰・上撰・佳撰」の意味を知れば、日本酒選びがもっと楽しくなると思いますので、ぜひ参考にしてください。
目次
「特撰・上撰・佳撰」は酒蔵や酒造メーカー独自のランク付け
「特撰・上撰・佳撰」は、1943年(昭和18年)に創設された「級別制度」のなごりで、酒蔵や酒造メーカーが独自の基準でランク付けしたものです。
それでは、「特撰・上撰・佳撰」の元となった「級別制度」とはどのような制度だったのでしょか?
「級別制度」とは|日本酒を3段階(特級・一級・二級)で課税する制度
日本酒の「級別制度」とは、日本酒を「特級・一級・二級」の3段階で区分して酒税を課す制度です。
1943年(昭和18年)に施行され、現在の純米酒、吟醸酒、本醸造酒といった「特定名称酒」の基準ができる1992年(平成4年)まで運用されていました。
級別制度では、日本酒を以下のとおり3つに区分されていました。
- 特級 ⇒ 品質が優良であるもの
- 一級 ⇒ 品質が佳良であるもの
- 二級 ⇒ 特級及び一級に該当しないもの
どの等級を名乗るかは、蔵元が希望する等級の審査で決まります。
蔵元は日本酒のサンプルを提出し、専門家で構成された「酒類審査会」が基準(アルコール度数や酒質)を満たしているか審査を行います。
審査に合格すると日本酒のラベルに等級の表示が許されるとともに、国税庁のお墨付きをもらうことができたのです。
ちなみに、審査を受けない日本酒は全て「二級」のランクが付けられていました。
サケ丸
さやかちゃん
「級別制度」の崩壊|二級酒の高級化から等級と酒の味が伴わなくなった
「特級酒」は最高級のお酒ということで消費者へのアピールになりますが、一方で酒税がとても高かったようです。
一升あたりの酒税 | |
特級酒 | 1,027円 |
一級酒 | 503円 |
二級酒 | 194円 |
特級酒と二級酒の差は833円…、5倍の差は大きいですよね。
しかも、特級酒には一定の価格を越えると課税される「従価税」も課されていた時代があり、二重課税により「もはや税金を飲んでいる」といった状況だったのです。
この状況に嫌気が差した蔵元は、昭和44年の自主流通米制度への移行をきっかけに吟醸酒クラスの高品質な日本酒を「二級酒」として安く売るようになり、「酒造メーカーの特級酒よりも地方の蔵元が造った二級酒のほうが美味しい」という逆転現象が起きるようになったのです。
サケ丸
「特撰・上撰・佳撰」は級別制度の代わりに使われるようになった
次第に「特級・一級・二級の区分が日本酒の品質に対応していない!」という級別制度の矛盾が指摘されるようになり、級別制度は1992年に廃止されました。
ただ、これまで等級を目安に日本酒を選んでいた消費者にとっては、級別制度が廃止されると商品選びに混乱が生じてしまします。
そこで、蔵元や酒造メーカーは級別制度の代わりに「特撰・上撰・佳撰」を設けたのです。
さやかちゃん
「特撰・上撰・佳撰」は蔵元が独自の基準で付けた「当社比ランキング」
「特撰・上撰・佳撰」は、蔵元が独自のルールに基づいてランク付けしたもので、全国統一の基準があるわけではありません。
例えば車は上級グレード、標準グレード、廉価グレードといったように、同じ車種でも装備品の違いよって差別化されていますよね。
「特撰・上撰・佳撰」も考え方は同じで、原料米の品種や精米歩合などの違いに基づいて蔵元が消費者に分かりやすいように付けた「当社比ランキング」のようなものです。
そのため、例えば「蔵元Aの特選」と「蔵元Bの特選」は同じ「特選」でも使われている原料が異なるため、単純に比較することができないのです。
サケ丸
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「特撰・上撰・佳撰」と特定名称酒の違いは全国統一の基準があるか否か
特撰・上撰・佳撰 | 特定名称酒 | |
法的な規定 | なし(蔵元独自の基準) | あり(清酒の製法品質表示基準) |
区分けの基準 | 全国統一の基準なし | 使用原料・精米歩合・製法など |
「特撰・上撰・佳撰」と「特定名称酒」の違いは、全国統一の基準あるか否かにあります。
特定名称酒は、「清酒の製法品質表示基準」で定められた酒米の精米歩合、麹米の使用割合、醸造アルコールの使用量など基づいて8つに分類されています。
名称 | 使用原料 | 精米歩合 | |||
吟醸酒 | 大吟醸酒 | 米 | 米麹 | 醸造アルコール | 50%以下 |
吟醸酒 | 米 | 米麹 | 醸造アルコール | 60%以下 | |
純米酒 | 純米大吟醸酒 | 米 | 米麹 | 50%以下 | |
純米吟醸酒 | 米 | 米麹 | 60%以下 | ||
特別純米酒 | 米 | 米麹 | 60%以下または特別な製造方法 | ||
純米酒 | 米 | 米麹 | 70%以下 | ||
本醸造酒 | 特別本醸造酒 | 米 | 米麹 | 醸造アルコール | 60%以下または特別な製造方法 |
本醸造酒 | 米 | 米麹 | 醸造アルコール | 70%以下 |
一方、「特撰・上撰・佳撰」は蔵元独自のルールに基づいて区分されていますが、全国統一の基準があるわけではありません。
「特撰・上撰・佳撰」と「特定名称酒」は基準やルールが全く異なるため、例えば特定名称酒の中でもハイスペックな吟醸酒と、「特撰」のお酒を単純に比較することはできないのです。
さやかちゃん
関連記事:日本酒の特定名称酒とは?|8種類の製法や味わいの違いを徹底解説!
「特撰・上撰・佳撰」を基準にお気に入り味わいを見つけましょう
蔵元独自でランク付けされた「特撰・上撰・佳撰」は紙パックの普通酒でよく使われています。
普通酒とは、純米酒や吟醸酒など特定名称酒の要件を満たしていない日本酒で、日本酒の国内消費で7割のシェアを占めています。
普通酒は特定名称酒の要件を満たしていないため、「低品質なお酒」というイメージを持たれている方もいますが、そんなことはありません。
普通酒でも精米歩合が60%と吟醸酒クラスのお酒を造っている酒蔵もあり、「家庭でよく飲まれている普通酒だからこそ品質の良い日本酒を造りたい!」という高い志を持って酒造りに取り組んでいる蔵元がたくさんあります。
▼普通酒についてはこちらの記事ご覧くださいませ

普通酒は比較的リーズナブルで、家飲みにはピッタリのお酒です。
まずはお気に入りの蔵を見つけ、その蔵の普通酒のラインナップの中で「特撰」「上撰」「佳撰」を目安に、あなたにピッタリの1本を探してみてはいかがでしょうか。
サケ丸
さやかちゃん
まとめ
今回は「特撰・上撰・佳撰」についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
「特撰・上撰・佳撰」は級別制度の代わりに蔵元で導入された独自のランキングであることをご理解いただけたかと思います。
「特撰・上撰・佳撰」は全国統一の基準がないため、異なる蔵元から出している「特選」を単純に比較することができませんが、同じ酒蔵や酒造メーカーが販売している日本酒を選ぶ際に「特撰・上撰・佳撰」を目安にしていただければと思います。
- 「特撰・上撰・佳撰」とは昔の級別制度のなごりで、現在でも一部の酒蔵で使われている。
- 「特撰・上撰・佳撰」は蔵元が独自のルールに基づいてランク付けしたもので、全国統一の基準はない。
- 級別制度とは、日本酒を「特級・一級・二級」の3段階で区分して酒税を課す制度で、1992年(平成4年)まで運用されていました。
- 級別制度が廃止されるとどれを選んだらよいか消費者に混乱が生じるため、「特撰・上撰・佳撰」が使われるようになった。
- 「特撰・上撰・佳撰」と特定名称酒の違いは、全国統一の規定に基づいた区分けが行われているか否かにある。
- 特定名称酒は、「清酒の製法品質表示基準」で定められた白米の精米歩合、麹米の使用割合、醸造アルコールの使用量など基づき8つに分類されている。
- 「特撰・上撰・佳撰」は、紙パックの普通酒でよく使われていて、比較的リーズナブルで家飲みにはピッタリのお酒です。